奈良県吉野郡に天川村という小さな集落がある。
その集落の真ん中(坪ノ内地区)に2000年以上も前に建立された日本最古の神社がある。
天河大辮財天社といい、ご本尊の大辮財天様は水の神様として古くから崇められてきた。天川村の背後に聳え立つ大峯山は修験道の場として知られており、世界遺産に登録されている。

天河神社の77代柿坂神酒之祐宮司様とは20年前にご縁をいただき、プロトン医学研究所の理事までお願いしている。

天河大辮財天社との関わりから、プロトン医学研究所の水の研究に新たな視点が開けたのである。「生命・魂・心」──これまでの生命科学が避けてきた世界である。

天河神社の神事は、年に22回に及ぶ。そのうち春夏秋冬に大祭が催される。プロトン医学研究所はスタッフとともに、毎年、いずれかの大祭に参拝することにしているが、今年は、新コロナウイルス禍で2月の節分祭、春の大祭、夏の七夕祭といずれも神事は中止になり、参拝することはできなくなった。
20年前の1月、始めて天河様を訪問したことが、昨日のことように感じられる。

奈良県吉野路を越え、車で山間をくねくねと上り切ると「新川合トンネル」が待っている。麓の橿原から車で登ること約90分、標高1000メートルの銀世界であった。

トンネルを出て天川村に入ると不思議な心持になる。この心情を説明するのはかなり困難である。強いて言えば、童心──遠い昔の風景があり、そこに幼児に戻った自分が佇んでいる。

この情緒は自分だけなのかと思い、同行者の様子を見ると、1歳か2歳児の眼差しで周りの景色を見ている。 

「なんか違う」「いいね」 言葉にすると、つまらないが、思うところは同じ。

天川は原点回帰の里なのである。日本の原点という人もいる。だから、懐かしくて、なぜか切ない。

京都大学の地質学研究室によると、今から3憶5千年前に日本列島が大陸から分断されて、最初に隆起した所が、吉野郡天川村だという。当時の岩石が天川神社の禊ぎ殿に、いくつも重なっている。

「水をさわる(研究)ものは、一度は天河大辮財天様にお参りしなければなりませんよ」     

 天河大辮財天様の熱心な信徒である知人の言葉に後押しされて天河天社に参拝したのである。

水の研究に携わって25年、科学的な研究では知り得なかった、もうひとつの水の世界を数多く教えられた。それ以降、毎年、多い時には年に数回、天川詣が続いている。

四季折々の神事や幽玄な天河能など天川で見聞きするものすべてが私の大脳前頭葉を刺激してくれる。それまで眠っていた遺伝子が覚醒し、これまで見えなかった世界が感じられるようになったのではないのかと考える。

遺伝子には祖先から受け継いだ生命記憶が刷り込まれている。DNAは形質(肉体)、RNAは生命(魂・精神)の情報といわれている。30世代、700年前まで遡ると、現代の私たちに遺伝子を受け渡した人の数は約10億5千万人になる。

五感が震えるほど感動したり、異次元の体験をすると眠っていた遺伝子のスイッチがオンになるといわれている。(トンネルを抜けて天川村に入る時に感じた不思議な感覚はこのことであったのか)。

文献によると、天川村の背後に聳え立つ大峯山系は3億5千年前、地球規模で起きた大地殻変動(アルプス造山運動)で海底が隆起してできた山脈である。いわば日本列島の臍であり、霊山と呼ぶにふさわしい。

連綿と語り次がれている天川の自然や歴史は一般に伝えられている古代史をはるかに超えている。

私は水の研究者なので、先ず天河水のことを調べてみた。

大峯山系から湧出している地下水は花崗岩(マグマの塊)や雲母、水晶のエネルギー照射を受けて解離(イオン化)してエネルギー性の高い水になっている。

霊山によって資化した岩盤水は大辮財天が祀られている坪ノ内村に、今も枯渇することなく脈々と流れ込んでいる。 そして、太古の時代から「水は万物の根源(神)であり、生命の源である」ことを天河大辮財天社が示唆している。

大辮財天様に加護された天河水は古くから薬水と言われてきた。多くの人が天河水の薬効によって救われ、今も尚、全国各地から天河水を求めて大辮財天様のもとを訪れている。

天河水は地球創成期のエネルギーを持つ地層から湧き出ている。古代人は天河水の薬効は神(天河大辮財天様)の恵みと考えたのである。

天河大辮財天の由来は、神々の降臨(地球創生)から発している。

天河伝説は地球の歴史の物語でもある。

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