初夏の風物詩といえば、鮎の川登を一番にあげたい。

力学の法則に逆らって鮎がジャンプして川を遡上する姿は神々しく、その場から去りがたい思いに駆られる。

鮎は北海道西部から沖縄まで日本の各地に生息していて、3月から7月にかけて若鮎の群れが川を上り始める。

鮎が遡上する川は急流ばかりだ。鮎が何でそんなことが出来るのか、幼少のころ、大人たちに質問したが答えてくれなかった。多分、誰も知らなかったのだろう。

在学中に、流体力学の専門書を調べたが、答えは見つからなかった。

**写真 鮎の川登

以来、若鮎の謎は、忘却の彼方に置き去りにしていた。

5年前、水の神様で知られている奈良・奥吉野の天河神社の春の大祭に参拝した折、天川鮎を頂いた。その時に鮎の遡上のことが話題になったが、その席でも遡上の謎は解けなかった。京都在住の著名な陶芸家の近藤高弘先生も同席されていて興味深そうに耳を傾けていた。近藤先生の祖父は人間国宝の近藤悠三先生である。

後日、近藤先生から連絡があり、貴重なアドバイスをいただいた。

「オーストリアのナチュラリストで発明家のヴィクトル・シャウベルーガーの伝記「自然は脈動する」を読めば、鮎遡上の謎が解けるかもしれない。400ページを超える大著作で、歯ごたえ十分ですよ」 最後に、ユーモアを交えた脅し文句も付け加えられたが、それ以上の説明はなかった。早速、大著作を手に入れた。

ヴィクトル・シャウベルガーは、20世紀末のヨーロッパの自然科学の先駆者であったが、ガリレオからマックスプランクにいたる先駆者がそうであったように当時の「専門家」から疑いの目で見られ、とくにナチスから迫害を受け、しばらく身を隠していた。今日に至ってシャウベルガーの研究は高い評価を受けている。

自然界の二つの渦

シャウベルガーの理論は膨大かつ難解だが、アリック・バーソロミューによる明快な解説書が出版されている。

シャウベルガーによると自然界は二つのエネルギーによって動いている。二つのエネルギーは内に向かう内心性の渦と外に向かう外心性の渦である。

渦は太陽の運行と地球の自転によって生み出されている。

内に向かう求心性のエネルギーは創造、発展、浄化と関係しており、生命の渦は求心性である。呼吸・消化・吸収、血流、神経系は内に向かっている。

もう一つのエネルギーは外心性で直線的に外へ向かっている。破壊と消滅と関係する遠心性の動きで、この動きは争いの駆動力を表している。

台風・津波・地震・火事は破壊のエネルギーで外側に向かっている。

自然界の二つの渦はすべて、水の流れが生み出している。ここで、水の流れと結びついてくる。

二つの渦を作るのが水の温度であるという。言うまでもなく、我々の世界は水の中に包まれている。地中も地上、体内、上空も水である。液体・氷・気体・プラズマ(宇宙)などどんな状態であろうと水に包まれている。 内心性の渦と外心性の渦が同時に発生している場所が流れであり、ヴィクトル・シャウベルガーは川の流れの研究に没頭した。

「自然は脈動する」 アリック・バーソロミュー (日本教文社)

水中で1分に0.1℃未満の温度の傾き(温度差)があれば、それだけで渦を作るには十分である。

さて、春先に川の中でどんなことが起こっているのか。説明したい。

シャウベルガーによれば、外気温が10℃以上になると、川の中央部の温度は上昇して、15℃以上になり、内側に向かって求心力が働く。

求心力と下流に向かう遠心力がぶつかる所に鮎が集まる。求心力は下流に向おうとする遠心力を巻き込む。これによって求心力のエネルギーは高まり、川の中央に上流に押し上げる力が発生する。

鮎は川の中央に進んで上昇の流れに身を寄せて、上流にはね上げられる。さらに、求心力が働いて川の中央部の温度は高くなり、引き続き、求心力が働き、下流に向かう遠心力とぶつかる。

この繰り返しによって、鮎は上流の生まれ故郷にたどり着くことができる。産卵のために上流を向かう魚は、常に川の中央部に集まってくる。

産卵は生命エネルギーであり、川の中心部の求心力と共振して、上流に向かう力がさらに強まる。流れによる温度差によって発生する求心力と遠心力によって毎年、新しい生命誌が綴られていく。

初夏の風物詩の舞台裏もなかなか興味深いものがある。

実は、モノフロー±解離水装置には、水の渦の原理が応用されている。

水道管から送られてきた原水が装置内のカートリッジ(浄水装置)を通過すると、遠心性の力が働く(水を押し出す)。電解槽の中では、求心性のエネルギーに変えられ、水圧が一定になる。電解槽の内部は曲がりくねっており、川の中央部の水の流れと同様、遠心力と求心力が働き、エネルギーが増加し(エンハンス)、結果、水の解離が進んでいく。仕組みになっている。

モノフロー±解離水装置には、鮎は遡上していないが、川の流れにおけるエネルギー発生と増加の原理は生かされている。

カテゴリー: 水の探究